古布

優雅で繊細な和の色に染められた古布(こふ)たち。
紀屋の作品で使われている古布は、明治から昭和のはじめにかけて作られ、
古いものでは100年を超える歳月を経て、めぐりめぐって私のもとへやって来ました。
多少の傷みはありますが、今でも色あせずにちゃんと布として存在している。
日本の物づくりがいかに優れていたか、よくわかります。

そんなすばらしいものが箪笥に眠ったままなんて、もったいない!

現代の職人として、いにしえの職人の意思を継ぎ、この尊い古布を現代の生活に合った、新たなものに生まれ変わらせることが私の仕事です。

着物をほどいていると、思いがけないお宝に出会うことがあります。
裏布も芯も、今はお店で買う時代ですが、当時は布がとても大事だったのです、何かが書かれた和紙が縫い込まれていたり、当時の古着のはぎれが縫い付けられていたり・・・。
糸も貴重でしたから、一度ほどいた糸を継いで縫った着物もあります。

古布はそんな日本人の、ものを大切にする心と、慎ましやかな暮らしを伝える、過去からの贈り物だと思います。着られなくなった着物は羽織や子供の着物に仕立て直し、また着られなくなったら布団や座布団、あるいははぎ合わせて別のものに作りかえ、そして最後はおむつやぞうきんにする、それが当たり前でした。私も、古布からバッグを作り、すり切れたらもうひとまわり小さいバッグに仕立て直し、どんどん小さくして、最後は小物や細工物にしています。

どれも激動の時代を乗り越えて来た、愛おしい布ですから、大切に使いたいと思います。
紀屋の作品をきっかけに、みなさまにも古布でものを作ることの楽しさが伝われば幸いです。